詩歌 verse

あしびきの山鳥の尾のしだり尾の ながながし夜を 一人かも寝む 山鳥の枝垂れる尾のように、長い長い夜を一人で寝るのであろうか。 拾遺集 柿本人麻呂
有馬山 猪名の笹原に風がそよそよと吹くと笹原はそよそよと音を立ててなびきます。そよ(そう、そうなんです)私の方はどうしてあなたのことを忘れられましょうか。 後拾遺集 大弐三位
やすらはで寝なましものを小夜更けて 傾くまでの月を見しかな あなたが来ないならためらわずに寝てしまえばよかった。夜が更けて傾くまで月を見てしまったことですよ。 後拾遺集 赤染衛門
心にもあらで浮世にながらへば 恋しかるべき夜半の月かな わたしの気持ちとは裏腹につらい浮世を生きながらえていたならば、きっと懐かしく思い出すに違いない、この夜更けの月を。 後拾遺集 三条院
天つ風 雲の通ひ路 吹き閉ぢよ 乙女の姿しばしとどめん 天を吹く風よ天女たちが帰っていく雲の通り路を吹き閉ざしておくれ。天の舞姫たちの美しい姿をもうしばらく此処に留めておきたいのです。 古今集 僧正遍昭(遍照)
瀬をはやみ岩にせかるる滝川の われても末に逢はんとぞ思ふ 川の流れが速いので岩にせき止められ、二つに分かれる滝川のように、別れてもいつかは再会しようと思います。 詞花集 崇徳院
春過ぎて夏キ来にけらし白妙の 衣干すてふ天の香具山 春が過ぎ夏が来たようです。あの天の香具山に白い衣がひるがえっているのですから。 万葉集 持統天皇
ひとはいさ 心も知らずふるさとは 花ぞ昔の香に匂ひける あなたはさぁどうだかわかりませんが、昔懐かしいこの里では梅の花だけがかつてと同じように香りを漂わせています。 古今集  百人一首でもおなじみの貫之の歌です。
やすらはで 寝なましものを 小夜ふけて かたぶくまでの 月を見しかな
青山有雪諳松性 碧落無雲称鶴心 青山に雪有りて松の性を諳(そら)んず。 碧落に雲無くして鶴の心に称(かな)へり。 山に雪が積もっても松だけは常盤の性を保っていることがわかります。 雲のない青空に鶴が舞うのを見ると、晴天が鶴の清らかな心に称うことがわかります。 許渾「寄殷堯藩先輩」
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